エッセイ

出勤前の贈り物

出張の合間、会社に向かう朝

僕は比較的出張がおおい仕事をしている。

今日は1月15日。県外出張の合間に会社で事務作業をする予定。

現場での仕事がおおいが、事務処理が滞ると書類と領収書の山に埋もれることになる。

すっかり寒くなった朝、行きなれた駅にいき、会社に向かう途中の交差点でキョロキョロしているおばあちゃんを見つけた。

たくさんの人が往来しているが、おばあちゃんは誰にも声をかけていない様子。

「あの~。なにかお困りですか?」

僕は声をかけたが、内心は「困っているなら信号待ちのときに誰かに聞けばいいのにな」と思っていた。

若い女性だったら声をかけていないと思うし、自分の時間に余裕がなければ声をかけないこともある。

「困ってたんだけどね、もう解決したから大丈夫です。」

おばあちゃんはニッコリ笑ってそう答えた。

思いがけない再会、それは必然だった。

「そうですか。でしたら良かったですね。それでは失礼します。」

何事もなかったのなら良かったのだが、ちょっとおせっかい過ぎた自分に恥ずかしさが込み上げてくる。

まぁ、こんなこともある。僕は気を取り直して歩き出そうとした。

「ちょっとちょっと!!」

おばあちゃんが呼び止める。

「ん?僕ですか?」「何か?」

僕は聞いた。

「あのときはありがとねぇぇ」


おばあちゃんは深々とお辞儀をした。

なんのことかサッパリわからない僕は、

「あぁ、はぁ・・・」と気のない返事をしている。

「無事病院に行けてね、入院してた人も、もうすぐ退院なんです。」


おばあちゃんは言う。

・・・ん??・・・んんっ!!!!

もしかして、、、、、、、

以前こんなことがあったのを僕は思い出した。

もしかして、あの時のおばぁちゃん!!

「あー!あのときの!無事に病院行けたんですね。それは良かったです。」

思い出して僕は驚いた。

「一言お礼をいいたくてね、ありがとねぇぇ」


おばあちゃんは重ねてお礼を言った。

「なんにも用意してないけど、あめ食べるかい?」


おばあちゃんはバックの中からパインアメを取り出して僕にくれた。

「いえいえ、大丈夫です。あっ、でも、あめ戴きます。」


結局パインあめをもらっているし、なにが大丈夫なのかわからない。
驚くとついつい違う角度の言葉がでてしまう僕。

「それでは失礼します」


ひとことふたこと、言葉をかわし、僕は今度こそ会社に向かった。

もしかして、おばあちゃんがキョロキョロしていたのは僕を探していたのかもしれない。



以前あったときから1ヶ月以上たっている。

何回病院にきたのかわからないが、僕にとっては偶然でも、おばあちゃんにとっては必然だったのかもしれない。

パインアメ記念日

僕はおばあちゃんにもらったパインアメをシャツの胸ポケットにいれた。

今日は何やら気分がよかったのは言うまでもない。



道をきかれたり、声をかけられがちな僕だけど、2回目に会ってお礼を言われたのは初めてのこと。

パインアメ2個で1日中ご機嫌なんて、なんてコスパのいい男なんだと自分でも思う。

でも、おばあちゃんの気持ちが嬉しくて、やっぱり世の中、正しい行いをしていれば自分にも返ってくるものなんだと実感した。

今日の出来事が、また僕をおせっかいにしてしまうのかもしれない。

それもまたいい。そんな風に思う。

Good LUCK おばぁちゃん。

Fin.